【私の伝える道~SNS編】 コロナが生んだ新しい布教スタイルの模索(組織編)

コロナ禍、世の中が、人と人の接触を自粛する空気が強まり、従前の布教教化活動を行えないもどかしさを感じていた僧侶の皆さんも多かったことと思います。
これからご紹介する「生きる力オンライン」という活動はこうした雰囲気の中から生まれたSNSによるオンライン教化活動です。
YouTube法話動画の配信とFacebookでの法話コラムの投稿を行っています。

運営しているのは、曹洞宗僧侶のグループです。曹洞宗寺院は、地域ごとに10~20くらいの寺院により「教区」を形成しています。「生きる力オンライン」を運営しているのは、「神奈川県第二宗務所第五教区」で、横浜市南西部、藤沢市東部、鎌倉市北部にまたがる21ヵ寺から成っています。
私たちは、もともと、40年以上前から、『生きる力』という教化冊子(施本)を毎年一回、お盆の時期に作成して、檀信徒の皆さんに配布していました。その「オンライン版」という位置づけです。
活動の存在を知ってもらうために、寺院掲示用のポスターとポストカードサイズの配布用チラシを作製し、檀信徒の皆さんを中心に、告知活動を行いました。もちろん、冊子『生きる力』にもQRコードを掲載し、読み込んで視聴できるようにしています。

YouTube動画は、毎月1回公開しています。本当はもう少し頻繁に公開したいところですが、企画、撮影、編集とすべて、教区僧侶の自前で行っていることから、どうしても月に1回程度の配信になってしまうのが現状です。お葬儀など急な檀務が入れば、そちらを優先させなければならない現実もあります。「教区の教化活動」と「自坊の檀務」のバランスをうまく取りながら少しずつでも継続的に活動出来るように心がけています。

Facebookコラムは一週間に一度の公開をしています。お盆やお彼岸などの季節の仏事やお釈迦さまやお祖師さまなどにまつわる行事などにまつわるコラムを掲載しています。500字程度の短い文章が好まれるのかと思っていましたが、意外に、1000字を超えるような文章も多くの「いいね!」をいただくことに気がつきました。自分の経験などを盛り込みながらじっくり語るような法話も好感をいただけるのかなと感じています。

試行錯誤の中で行っている活動ですが、続けていると、少しずつ、視聴してくださる方がたも多くなってきました。菩提寺の施食会(施餓鬼会)でお身内の初盆供養のために参列されていた方が、当日の感想と私たちへのメッセージをFacebook「コメント欄」にコメントしてくださったこともあります。教区檀信徒ではない一般の方が、ネット上で、私たちのサイトを知ってくださり、仏像めぐりで訪れた教区寺院で「いつも見ていますよ」と声をかけてくださったこともありました。このような声に勇気づけられながら続けることが出来ていると思っています。

「教区」というグループで活動することのメリットも感じています。個人的には、パソコンやwebはむしろ苦手で、オンライン教化などは、なかなか一歩を踏み出すことが出来なかったのですが、一緒にやってくれる仲間がいることで、それぞれの得意分野を活かしながら、支え合って、細々とではありますが、活動出来ていると感じます。
こうした活動の輪が、地域、あるいは、宗派を超えて広がってゆくと良いなと思っています。

とはいえ、私たちには、課題もたくさんあります。
先日、ある元アナウンサーの方とお話していた際に、「原稿を見ているのが視聴者に察せられると心が離れてしまう」というアドバイスをいただきました。そして、その方は、「カメラの奥にいる視聴者に語りかけてください」とおっしゃいました。
これからもスマートフォンやパソコンなどの画面を通じて私たちの想いを汲み取っていただく方がたの心に届くように発信を続けていけたらと思っています。

関水博道

神奈川県横浜市曹洞宗東泉寺副住職。駒澤大学大学院修士課程修了後、現在は、曹洞宗総合研究センターにおいて現代人への布教伝道の方策の検討、イベントの実践などに携わっている。



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