【テラ未来予想図PARTⅢ】を始めるにあたって
増田将之(仏教井戸端トーク主宰)
東日本大震災から10年以上が経過しましたが、あの時の揺れ、テレビから流れてくる津波の映像は、いまだに鮮明に目に焼きついています。
町じゅうが混乱し、交通も寸断されてしまい、当時車で通勤していた私は、いつもだと1時間くらいの道のりだったのが、夕方にお寺を閉めて家に着いたのは次の日の深夜でした。
また、福島での原発事故もまだまだ復興の途中であると思います。
あの爆発した映像は津波と同じようにくっきりと残り、自身の中に大震災の爪痕として残っています。
当時、ホットスポットと呼ばれる地域に私は住んでいました。
まだ娘は小さく、また、妻も妊娠していたため、放射能の数値が上がることに対して、知識は全くないものの、目に見えてくる数字というものに脅かされ、とても不安になっていたのを覚えています。
この不安に苛まれていたときに、太平洋戦争で原爆を広島でうけた祖父が一生懸命に放射能について話してくれました。
つらい過去であるがゆえに今まで家族である私たちにも話たがらなかったのですが、「俺はたくさん放射能を浴びたが、こんなに元気だ」と力強い経験談を聞き、数値に触れるたびに沸き起こる目に見えない不安から少し解放され、普段は無口な祖父の精一杯の励ましに勇気を与えられたような気が致しました。
今の時代もよく似ている気がします、
そう、新型コロナウィルスという見えない不安。
しかし東日本大震災から少しずつ復興してきているように、新型コロナウィルスに対しても少しずつ前に進みながら生活を送り続けなければならない。そして、その変化とともに寺院も地域と寄り添い、地域の憩いの場として、また、情報発信の場として常に発展させていかなければならないのがお寺なのではないかと思っています。
今回、震災から10年が経ったという節目を通して、今の福島の現状を踏まえながら、このテラ未来予想図を進めて行こうと思います。
今回は、「情熱大陸」にも出演され、大変注目されている仏師・加藤巍山師と、東日本大震災をご縁に仏門へ入られ、活発に活動を続ける福島・壽徳寺住職の松村妙仁師のお二人で進めて行っていただけたらと思い、お二人にこの企画の参加を打診いたしました。
このお二人の共通点は、まさに東日本大震災が大きなご縁になって前に歩みだしたというところです。
このあたりは今後のコラムの中で自己紹介も含めて書いていただきながら、東日本大震災の復興から発展へ、地域に根ざしながら寺院・僧侶・仏師等、仏教に携わる者が教えをひろめ、いかにしてより発展させていくべきなのかを模索するために、この往復書簡的コラムのテラ未来予想図が進めていければと思っています。
同時に、見えない不安というものも少し解消できれば、コロナ禍でもあるいま、少しはホッと出来るような気がします。
まずは、福島の現状をお寺、あるいは僧侶として見えてくる景色、そして課題などを福島の松村妙仁師よりいただければと思います。どうぞよろしくお願い致します。