【特別寄稿】千年の愚行・北陸新幹線延伸計画を危惧する(宮城泰年 門主猊下)

増田です。このコラムは修験道(本山修験宗)の聖護院門跡門主猊下が、特別に寄せられたものです。
千年の愚行・北陸新幹線延伸計画を危惧する

聖護院門跡門主
宮城泰年猊下
自然に恵まれ千年の歴史と文化財の宝庫である京都、その世界にも類をみないほどの宗教都市京都が北陸新幹線延伸計画によって大きな危機にさらされています。
計画されている小浜~京都ルートは全線の80%が長大なトンネルで丹波山地を貫き、京都市内を北から南へ数多の名刹古刹、ご本尊の下深度40㍍を貫き京都駅に入ります。
当然のこと市内では地盤沈下や地下水位の低下、水脈の途絶が起こることは目に見えています。現に地下鉄の開通でさえも沿線の沢山の井戸枯れがおこり移転を余儀なくされた豆腐店が多々ありました。市民の生活だけでなく豊かな名水は酒造りや和菓子作り、京料理に活かされています。お茶の家元はそこに伝わる井戸水によって家元の味をみせ、まさに京都の水は京都の文化を育む「生かされ生きる水」なのです。
水は宗教上に於ても大きな意味と働きをします。
宗教都市京都の寺社においては庭園、宗教行事に水は欠くことはできません。山から流れ出る川の分岐に水分の神を祀るように水は自然からの大いなる恵みとして大切にされてきました。
京都の地下には多少の層も含めて地下60㍍まで琵琶湖に匹敵する地下水が溜まり動いています。
調査を担当する鉄道運輸機構は、シールド工法ではそのような地質でも問題がないと言いますが現実には先の例のような問題も起き、シールド工法による工事が進行中の東京外郭道路では大きな陥没事故が起きています。
もしこれが大深度で影響力が広範囲に及ぶ京都でもおこればと(起こりえることは確実と言えましょう)思うとぞっとします。
取り返しのきかない人災と言えるでしょう。
トンネル工事ではさらに健康被害が懸念されます。堀削される丹波山麓の土壌にはヒ素やマンガンが多く含まれ、莫大な処理土壌から出る汚染水や湧水が地域の河川や井戸にしみ込み、鴨川や京都の巨大な地下水甕に流入すれば住民の健康が脅かされます。
京都の伝統文化とそれを支える人々の命・生業が根底から崩れることになります。
目先の利便性と偏った経済効果しか見ない計画は、この一利の為に百害を野放しにしてしまうことです。
私たちは利便性や経済効果を求め、もっともっとという過剰な欲望は当然付随するマイナス面に目をそらして来ました。
切られた水脈は決して元に戻りません。
もし京都に数多ある文化遺産が陥没したら決して元に戻りません。
天秤の一方にはカネと過剰な利便、もう一方には自然の恩恵と人の命・生業、文化遺産、どちらが重いでしょうか?
方向を定める時、天の摂理、地の摂理を軽んじてはなりません。
第二次世界大戦の時、当時敵国であったアメリカは京都の文化遺産の価値を知り守るために空爆を避けました。
それを自国民が地中に地雷を敷設しようとしている!この見識の浅さに恥ずかしくなります。
京都仏教会ではこの北陸新幹線延伸計画を「千年の愚行」として白紙撤回を求める署名活動をスタートしました。
京都府民、仏教界のみならず一人でも多くの方々にこの危機を知っていただき賛同をお寄せくださればありがたいことです。
{電子署名も受け付けていますので、 京都仏教会のホームページ(外部に飛びます) をご覧ください。ご希望があれば署名用紙もお送りいたします}