【私の伝える道】 フリースタイルな僧侶たち編集長交代、改めて紙媒体の良さを認識する

初めまして。「フリースタイルな僧侶たち」というフリーペーパーの四代目編集長をしております、秦正顕(はたまさあき)と申します。浄土真宗のお寺に生まれ、現在はITベンチャーの会社員とお寺の手伝いをしながら、団体の運営をしています。

フリースタイルな僧侶たちは、2009年に発行を開始し、これまで15年続いてきたフリーペーパー団体です。編集部には、宗派を問わず、また僧侶に限らず様々なバックグランドを持った有志のメンバーが集まり活動しています。年に2回、全国のお寺やカフェなど約700ヶ所に、毎号12,000部を発行し配布しています。

フリースタイルな僧侶たちの「フリースタイル」という言葉には、あらゆる枠組みや慣習にとらわれずに、自由に仏教を学び仏教と社会の橋渡しをしていこう、という思いが込められています。また、僧侶の立場から一方向的に仏教を説くのではなく、読者の目線に立って、人生の苦を共感・共有しながら、苦がやわらぐ道を一緒に考えていくことを大切にしています。

さて、フリースタイルな僧侶たちが設立された2009年というのは、SNSもまだ浸透しておらず、気軽に仏教の情報に触れられる機会が今と比べるとかなり少なかったのだと初代代表の池口さんは言います。そうした状況の中で、仏教を一番届けられる形態がフリーペーパーだったのだそうです。今でこそSNSが発達し、誰もが当たり前に使うものとなり、そうした媒体を通して伝道活動を行うお坊さんも多くいらっしゃいますが、当時はそんな選択肢もなかったようですね。

今はインターネットやSNSを通して本当に簡単に仏教の情報にアクセスできるようになりました。フリースタイルな僧侶たちも、15年間ずっとフリーペーパーを発行し続けてきましたが、数年前から各種SNSやWEB版を開設し、活用の幅を広げています。

たとえばWEB版では、活動の最新情報のほか、これまでの発行号を全てアーカイブ掲載しており、誰でも簡単に過去の号を読めるようになっています。(https://freemonk.net/

これから強化していきたいのはSNSで、自分たちからの発信はもちろんですが、特に「つながる」ということに力点を置いていきたいと考えています。

フリースタイルな僧侶たちは、仏教界と社会の橋渡しをすることを目的とした団体です。したがって、フリーペーパーを設置してくださっているお寺やスポット、そしてファンの方々とのつながりが、フリスタの活動においてとても重要なことになります。

紙媒体なのでこれまではオフラインの繋がりが中心でしたが、みなさんとSNS上でもつながっていくことで、オフラインの活動がオンラインにも拡張され、フリスタの活動が知ってもらえる機会もじんわりと広がっていくのではないかと考えています。

と、その一方で、そうはいってもフリースタイルな僧侶たちの活動は、フリーペーパーを作ることです。活動の中心にあるのは、ネットの世界ではなく、リアルな世界の中での手触り感のあるつながりなのだろうと思います。

15周年を迎えて代表を交代するこのタイミングで、改めてこの時代に紙媒体で情報発信を続ける意味をメンバー皆で話し合ってきました。でも、行き着くのは「やっぱり紙っていいよね」ということなんですよね。

そんな折、問い合わせ窓口にこんなメールが届きました。

「随分と昔にご縁のあった、千日山弘昌寺で手にした、僧侶たちのフリーマガジン2013年 Vol.20が本棚に残っていて、読み返していました。他の号も色々読みたいと思い、教えて頂きたく、ご連絡致しました。」

たぶん、インターネットで発信していても、10年前の情報が掘り出されて、読み返されることってあまりないのではないでしょうか。紙という物質として残るからこそ、ふとした瞬間に手に取って読み返すことができるのではないかと思います。この方のお問い合わせの中に、フリーペーパーだからこその良さが凝縮されているように感じました。

実際わたし自身も、元々はフリースタイルな僧侶たちを手に取り大ファンになったところからお坊さんとしての人生が始まっているので、家にはお気に入りの号がいくつかあり、たまに手に取って読み返すことがあります。ふと思い立って誌面を手に取りページをひらくと、当時初めて誌面を手に入れて大学の自習ルームで1文字1文字を噛み締めるように読み込んだ記憶が、あの頃の興奮と共によみがえってくるのです。五感を通して刻まれる記憶というのでしょうか。触覚だったり、嗅覚だったりを通してよみがえってくる感覚ってあるなあと思います。情報だけだったら、紙でもネットでも変わりませんが、紙というのは、そうした身体感覚も含めて記憶が保存されていくという良さがあるように思います。

手元に残る紙と、普遍的に色褪せない仏教の教えは、ある意味相性が良いのだと思います。SNSはフロー(流れる)型の情報媒体だと言いますが、まさに激流のように、毎日途方もない情報が生まれては流れ去っていきます。それに対して仏教の教えはどうでしょうか。本当に大切なことは、案外シンプルで、しかも変わらないことなのかもしれないと思っています。

フリースタイルな僧侶たちは、この時代にあえて紙で情報発信をするからこそ、普遍的で色褪せないものを誌面で表現して、残していけたらと考えています。

情報がものすごいスピードで流れていくのと同じように、人も日々ものすごいスピードで情報を浴び、移り変わってゆきます。

そんな激流のような人間の一生に寄り添って、普段はそっと本棚の中で見守りながら、節目節目で何度も出会い直せるような、そんなフリーペーパーが作れたら最高だなと思います。

これからのフリースタイルな僧侶たちの活動にぜひご注目いただけたら嬉しいです。

こんな時代に、あえてフリーペーパーを作りたいという物好きな(?)方がいらっしゃったら、ぜひ気軽にご連絡ください。一緒に活動していける僧侶の仲間を募集しています。

メール:info@freemonk.net
X:https://x.com/freemonk_web
Instagram:https://www.instagram.com/freemonk_official/
Facebook:https://www.facebook.com/freemonk.net/

秦正顕

浄土真宗興正派 晟徳寺 衆徒。1994年生まれ。フリースタイルな僧侶たち四代目編集長。早稲田大学社会科学部卒業、龍谷大学大学院真宗学専攻修了。早稲田大学卒業後、都内広告代理店入社。現在はメンタルヘルスケアアプリを運営するITベンチャーで働きながら、法務やフリーペーパーの編集、仏教ワークショップなど僧侶としても活動している。



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